北村:はじめに実業団という取り組みについて教えてください。
荒木氏:「株式会社いろはにぽぺと」というウェブ制作やシステム開発を行っている会社の福利厚生的な位置付けです。ただ、競技シーンには積極的に取り組んでいて、PUBGのリーグやOverwatchなど活動実績も多くあります。
北村:実業団の場合、ゲームの練習よりも実際の業務を行うことの比重が高いと思うのですがどのような仕組みなんですか?
荒木氏:よく例に出されるアカツキ様との比較で言うと、アカツキ様は業務4時間に4時間の練習時間で契約社員という位置付けですが、弊社は業務8時間で、正社員という位置付けです。業務中の練習時間という概念はありません。ただし、入社試験の段階ではeスポーツの技能を最大評価し、PCの貸与、eスポーツ手当の支給などeスポーツ活動をしやすい環境を用意しているという状況です。
比較表
契約 | 従事時間 | 臨時収入 | |
アカツキ | 契約社員 | 4時間 | 100%選手 |
いろは | 正社員 | 8時間 | 100%選手 |
北村:例えば練習時間の決まりって何かあるのですか?業務時間外の練習には手当がつく等
荒木氏:基本、練習については会社からの決まりというか取り決めは何もありません。業務時間外は自由ですのでその時間を練習に当てることは選手の自由というスタンスです。ただし、大会に出る際の時間の都合付けは出来る限り配慮するようにしていますし、成果を出した時の手当などは出す場合もあります。
北村:賞金やストリーマーとしての売り上げなどはどのような処理になりますか?
荒木氏:基本的には全てを選手に渡す様にしています。言い換えれば副業可能な会社というスタンスですね。
北村:実業団というと大手企業でしか取り組めない形態だと思っていましたが、御社の仕組みだと中小企業が無理なく取り組める新しい形態の実業団ですね。
荒木氏:その通りです。中小企業で取り組む方法を試行錯誤してきました。例えば、チームの形式にも拘っておりません。というのも例えばPUBGの場合4人必要ですが、弊社の場合、現在は社員選手が1名で後の3名は、社員ではないハイブリッドな方式をとっています。そして、社員以外の3名が弊社への就職を希望する際には一定の優遇を行っています。
北村:合理的な方法ですね。近い将来、選手の新規採用計画はありますか?
荒木氏:弊社の場合、基本「社員契約」なので、会社の状況に合わせての部門設立・新規採用になりますね。
現状新規採用の可能性があるとするならばPUBG部門ですので、その時はPUBGのトライアウト大会を注視します。
北村:3年前からeスポーツ実業団に取り組まれていますが、そもそものきっかけというか、狙いは何だったのですか?
荒木氏:私自身がゲーマーでeスポーツ好きだったというのもあるのですが、会社のスタンスとeスポーツの相性が良いということと、優秀な社員を集めたかった、というところがスタートです。
しかし、当時も今も「eスポーツ実業団」という定義も何もなかったのでかなり試行錯誤したのも事実です。はじめは金曜日だけを練習時間に当てる、練習をしやすいよう業務時間を普通の社員と極端にずらすといった取り組みをしていた時期もありましたが、弊社の場合あくまでも社員としての仕事ありきになってしまい、安定した環境を用意できない為、現在の形に落ち着きました。
北村:この3年を振り返ってみて成果は出ていると感じますか?
荒木氏:大きな成果が出ていると思っています。eスポーツがきっかけで弊社を知ってくれた方の応募だけで年間ベースで100人以上の応募がありましたし、実際有能な社員が集まってくれたと思っています。同時に、客先に行っても話題になりますし、eスポーツが縁で新規クライアントも獲得できました。
北村:応募者の数は凄いですね。
荒木氏:そうですね。実際、専門学校の就職課やセミプロチームの売り込みもあります。親御さん自ら問い合わせをしてくるケースもあります。やはり安定した生活が担保されるので人は集まります。しかし、強いチームが作れるか?というのは別の問題なのでここが難しい点だと感じています。
北村:最近、企業のeスポーツ部が増えています。富士通や凸版印刷などの大手も取り組んでいますが、eスポーツ実業団との違いはどの辺になりますか?
荒木氏:弊社もアカツキ様のようなしっかりとした実業団という形での活動が出来ていないので、まだ手探りの部分はありますが、ひとことで言うとeスポーツという技能が就職に役立つか否かだと思います。弊社はゲームの技能を最大限評価します。この時は学歴も性別も年齢も問いません。
北村:なるほどわかりやすい例えです。確かにゲームの技術が就職試験で役立つというのは他にはない魅力ですね。若い人が集まるのも理解できます。
荒木氏:加えて、企業のeスポーツ部の場合はあくまでも業務時間外のレクリエーションの一環なので、社員間コミュニケーションがメインです。ですのでプロが集う競技シーンへの参加にはこだわりはないと思いますが、われわれは競技シーンでの成果にこだわっています。
北村:全体的な話に戻りますが、話を整理すると選手にとってのeスポーツ実業団の良さって「正社員」ゆえの安定さと、「正社員」ゆえの自由時間(練習時間)の少なさのバランスをどう考えるか?ですね。
荒木氏:そうですね。そこのところの判断だと思います。社会経験がない選手は理解が難しいかもしれません。実際多いのは、プロゲーマーだったけど家族に反対されて社員の道を探した方や、プロで食えないので就職を選択したけども、まだプロゲーマーの道は諦めていない、と言う方が多いですね。いろんな選択肢があっていいと思っていますし、弊社から活躍するプロゲーマーが生まれることは目標でもあります。
北村:これからeスポーツ業界を目指す、若い人にアドバイスをお願いします。
荒木氏:ゲームの腕を上げるには練習時間を増やすしかありません。ですので、自由時間を多く取れる学生時代はフルに練習時間をとってレベルの高いプロを目指せばいいと思います。その時の、やり切れたか否かという「自己評価」とチャレンジした「結果」を持って、卒業時に自分の進む道を判断すればいいと思います。その中に実業団という選択肢もあるという感じですね。ラグビーやサッカーといったリアルのスポーツでは当たり前の選択肢ですが、eスポーツもこのような形式ができてくると思っています。
同時に、プロゲーマーであれ何であれ、社会人としての常識とマナーは必要です。ここのところをわかっていない方が多いと感じました。特に弊社は正社員での面談なのでゲームの技能以上にチェックします。最近ではTwitterの使い方は要チェックですね。
北村:ありがとうございました。最後に、現在は募集を一旦停止されてますが、HPで公開されている募集要項が判り易かったので下部に転載させていただきます。
会社サイト
「いろはにぽぺと侍ゲーミング」チームサイト
選手インタビュー
〜社会人とプロゲーマーは両立できると証明したい
https://listen-web.com/blog/story/masashi-yamashita
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PUBG部門応募要項
注意*現在は募集停止しております。再開は同社のTwitterなどで確認ください。
<応募資格>
■ゲームとしての条件
・チーム活動経験のある方・プレイ中に報告がしっかりできる方・PJSの参加規約に違反されていない方 ・一緒にチームを作っていく意識を持てる方・ゲームプレイする上で、快適なPCスペックと回線を保有している方・日本語でのコミュケーションが取れる方(ボイスチャット利用必須、国籍問わず)・ゲームへの向上心と協調性のある方・一般常識があり、SNSや実況など不特定多数の方が見る場面で適切な発言と対応が出来る方・18歳以上の方・パスポートの取得必須
■仕事も希望される方の条件 ※必ず就職して頂くという事ではありません
・当社で一緒に働ける方・今後当社で働く事を希望される方※学生の方や社会人の方で、すぐに就職出来なく将来的に一緒に働く事を希望される形でも問題ございません
<歓迎するスキル・経験>
・プログラミング経験(PHP、JSP、Unity、iOS、Androidなど) ・データベース、サーバー周りの知識 ・サイトデザイン・コーディングのスキル・サイトの運用経験
<歓迎する人物像>
一日中没頭していたい趣味がある方 ・趣味を仕事にしたい方 ・会社から支給される福利厚生で趣味を充実させたい方
<雇用形態>
正社員、契約社員
<給与>
月給18万円 ~
※保有されるスキル・経験・能力により優遇、相談の上で決定
※試用期間3ヵ月 (この期間の給与は本採用時と同額です)
※選手としてのチーム活動だけでなく正社員として入社し通常業務の従事した場合の給与・待遇になります
<実業団雇用向け福利厚生>
大会賞金・商品還元・海外大会参加バックアップ・ゲーム練習手当・ゲーミング練習場有り・寮有り
<通常の福利厚生>
社会保険・雇用保険・交通費支給
<採用までの流れ>
■チーム活動のみの場合
下記フォームからの応募
↓ 選考約1~3日
トライアウト(複数回行う場合もあります)
↓ 選考約1~4日
面談(オンライン)
↓ 選考約1~3日
活動開始
■就職も希望される場合
下記フォームからの応募
↓ 選考約1~3日
トライアウト(複数回行う場合もあります)
↓ 選考約1~3日
1次面接(オンライン)
↓ 選考約1~3日
【チーム活動開始可能】
↓
履歴書送付
↓ 選考約1~4日
2次面接(オンライン可)※省く場合もございます
↓ 選考約1~4日
最終面接(対面)
↓ 選考約1~4日
採用