寄稿コラム:なぜ今「スカウトリーグ」なのか!?eスポーツジャーナリスト「eスポーツの教科書」筆者 岡安学

ここ数年で一般的にも浸透してきたeスポーツ。

テレビゲームを介して、人と人が競い合うイベントであり、事象であり、職業である。今や小学生のなりたい職業のトップ10に入るほどの人気だが、未だにeスポーツの概念はあやふやで、プロ選手やアマチュア選手の垣根も曖昧だ。

先述した通り、eスポーツはここ数年で認知度が格段にあがってきたが、eスポーツ自体の歴史は意外と深い。海外では10年以上前からeスポーツと言う言葉を使い大会が開かれており、国内でもeスポーツではなく、ゲーム大会として、20年以上前から開催されている。賞金や賞品なども出ており、国内優勝選手が海外で他の国の優勝者と対戦することもすでにあった。

これらの時代の選手、当時は選手と言う概念ではなく、参加者としての立ち位置だったが、彼らの多くは、好きなゲームをいろんな人と対戦できる場としてあった。コミュニティベースで運営も行われており、同じ物を好きな人が集まり、楽しんでいると言った状況だ。

年月が経つにつれ、コミュニティが大きくなり、IPホルダー自身が大会運営に乗り出してくると、大会規模も大きくなり状況も変わってくる。スポンサー契約をするプロ選手やプロチームも現れだした。

そうなると、eスポーツイベントに参加する目的も変わってくる。以前は好きなゲームを大勢で集まってプレイすることが目的であったが、昨今ではプロ選手として活躍したいと言う目的も加わってくる。現在はこの切り替わりの段階に入ってきているのだろう。スポーツの世界も、お笑いの世界も、漫画の世界も、ほとんどのエンターテイメントがプロ化することで通る道と言える。

そして、プロ化することで多くの出資者も同時に出てくる。最初はeスポーツや選手の活動に感銘を受けて、出資することも多く、eスポーツに精通した人が率先して行ってきた。しかし、規模が大きくなると、広告として、文化事業への貢献として、さまざまな理由でeスポーツに関わる人や企業が増えてくる。その多くがeスポーツを理解しきる前に関わってくることも少なくない。

しかし、これが悪いことかと言うと一概にはそうだと言い切れない。事業の規模が大きくなる時には、より大きな出資が必要となり、eスポーツ関係以外の出資が必要となってくるからだ。

しかし、ここでひとつの歪みが生まれる。コミュニティ時代は選手もスポンサーも同志であったので、出資もしやすかったが、プロ選手を目指す若手と新たに出資を考えている企業との接点がなくなってきていることだ。とあるeスポーツ専門学校にはプロ選手を目指す生徒が500人を超えていると言う。

すべての選手が数少ない大会で好成績を残し、プロとして活躍ができるわけではない。大会で活躍できなくても実力を兼ね備えた選手はいる。
また、ゲームの腕前の高さは周知されていたとしても、その選手の素行や性格までは見極めることは難しい。急成長を遂げたeスポーツ界隈では、世界中で選手が不祥事を起こしているのも事実だ。

そこで、スポンサー企業やeスポーツチームと若手選手をエンゲージさせるシステム作りの必要性を感じ、ワンダーリーグがスカウトリーグの立ち上げをした。
スカウトリーグの活動のひとつであるトライアウト大会の実施は、在野のプロゲーマー候補の実力を示す手段として、スポンサーやチーム、スカウトなどの目に留めやすくするのが目的だ。

さらにスカウトリーグに参加する選手には、選手のプロフィールを確認できるタレントカードを用意。気になる選手の来歴を確認しつつ、ウェブチャット機能により、選手と直接交流をすることも可能だ。

eスポーツプレイヤーを目指す子供を持つ親としてみれば、契約するプロチームのことを知る機会にもなり、安心感を得られる。プロチームとしてみれば、数多くのプロ候補生の中から、有望な選手を見極めやすくする。

プロ選手を夢見る若者たちにとっては、プロになるための手段もわからず、何が必要なのかも理解していない場合が多い。プロ選手である以上、他の選手を凌駕する技量が必要となるが、それ以上に社会性が必要だ。また、チームやスポンサーがどういった人材を求めているかを理解することも重要だ。

プロチームやスポンサーが若手選手をすべて把握できないように、選手もプロチームやポンサーを見極めることは難しい。すべての選手が有名チームに参加できるわけではない以上、新興の中小チームに入るかどうか決めかねる時に、スカウトリーグに参加しているかどうかで、ひとつの見極め材料となりうると考えている。

スカウトリーグではお互い求めるものを共有しつつ、その中でベストな組み合わせのエンゲージを目指していく。
若者の才能を発揮できる場を提供し、必要な人材を揃える。長期にわたる支援ができる体制を整えるなど、片一方だけではできにくいことを繋げるハブとして存在していくのだ。

健全のチーム運営を行い、憧れのプロ選手から国民的なスター選手が輩出されるための下準備としてスカウトリーグがあるわけです。

ゲームライター 岡安学

EAA!! URL: https://fpsjp.net